【販売開始】LUXEうたカレ2024

LUXEの神保です!

「LUXEうたカレ2024」イベントへのご参加ありがとうございました!
選ばれた短歌がカレンダーになりました!

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「LUXEうたカレ2024」は点字加工をしています。企画経緯はこちら↓

<デザインについて>

「LUXEうたの卓上カレンダー2024」デザイン制作を行う上で、考えていたことをまとめています。私が読んで感じたことを表現していますので、短歌作者様の意図とは異なる場合がありますことをご了承ください。

1月

真夜中にねむるすべての生き物のまぶたに触れるやうに降る雪 / 小金森まき

とても静かで、あたたかい短歌です。「すべての生き物」の「まぶたに触れる」という広がり。「動物」ではなくて「生き物」と表記されていることに、とても意味を感じました。草花へ落ちる雪、大地へ落ちる雪。そんな植物から土まで映像として見えたとき「まぶた」が大きな比喩として、美しく包みこんでくれます。デザインでは、そんなあたたかい広がりを感じるように意識しました。


2月

栄えても廃れてもないふるさとの頼んでもない蜜柑が届く六厩めれう

なにげない優しさに触れる。2月の寒い部屋に届いた蜜柑は、部屋を明るくあたたかくしてくれます。短歌としての意味だけでなく、音の響きも繰り返しが心地よくてとても好きです。

ただ、デザインをするときにはとても悩みました。蜜柑だからオレンジ色に。というのもなんだか違う気がしました。この短歌が言いたいことって、蜜柑じゃないよな。と感じていたからです。もしお米が届いたのだとしても、この主体は蜜柑が届いたときと同じように、あたたかく心地良く感じたでしょう。蜜柑を主軸にするのはおかしい。何パターンも試作し決定したこちら。一人暮らしの部屋に蜜柑が届き、心があたたかくなった。というイメージで、上はわずかに青みがかった薄い黄色からオレンジ色への淡いグラデーション。写真では分かりづらいので、ぜひお手元でご覧ください♪


3月

さよなら、を触媒として加速していく春 そして結ぶ靴紐汐見りら

さよならと春のイメージから、色は水色からピンクへのグラデーション。初見の印象から、それは変えずに制作しました。文字の色をいくつか迷っている中で、白文字にした案もありました。淡く可愛らしく仕上がったのですが、結句の「結ぶ靴紐」の主体の意志の強さのようなものが表現したいと感じたときに、淡い色は違うな。と思い、黒に近い茶色で文字がはっきりと見えるようにしました。


4月

こぼれそうな気がして不意にチューリップの形で包む君の両頬インアン

すごく迷ったデザインのひとつです。ピンク、赤系統の色みのグラデーションがなかなか、しっくりくるものが決まらず、複数作った中から選びました。色でも迷いましたが、特に意識したのは、短歌を三段で組む時のどこで区切るか、です。三段目を「君の両頬」にするか「包む君の両頬」にするかで、見えてくる映像が変わってくる気がしました。「君の両頬」だと最後「頬」にフォーカスされますが、「包む君の両頬」の場合は包んでいる主体の手が最後に見えてきます。今回の短歌募集テーマが「触」だったことを考えると、映像として「手」が見えるほうが、主体と君との関係性やあたたかさを感じるのではないだろうか。と思い制作しました。


5月

はつなつの光を上手くつかまえてあなたが仕込むレモンシロップ飛和

一読したときにはレモンを収穫して、レモンシロップにしているところを「光を上手くつかまえて」と表現しているのかな。と思いました。けれど、レモンの黄熟は秋です。収穫時期が「はつなつ」5月頭ごろにならないんですよね。そうなると、上の句は何を「上手くつかまえた」のだろうか。そう考えたときに、上の句は「レモン」という実体のあるものではなく、「はつなつ」の空気感ではないだろうか、と感じました。だんだんと暑さを感じる日が増えてきた。朝起きて、カーテンを開ける。部屋に入ってくる日差しも、だんだんと夏らしくなってきている。そんな温度や空気を感じていた主体に、「あなた」がレモンシロップを作る。主体と同じように、だんだんと夏が近づいてくる感覚を「つかまえて」作るレモンシロップで夏をはじめる。爽やかでありながら、どこかあたたかみを感じる。そんな短歌に合わせてデザインしました。


6月

雨音となって触れてもいいですかあなたの星の白い紫陽花高田月光

この短歌の中で、私が一番特徴的だと感じたのは、「あなたの星の」の部分です。「あなたの庭の」ではない。「星」になっていることで「庭の紫陽花」という特定された映像ではなく「星」という宇宙から地球を見ているような、圧倒的な広がりを感じました。さらに上の句が「雨粒」ではなく「雨音」という、映像ではない、音で表現されているのと相まって、ファンタジーの世界のような感覚になりました。そう考えると「あなた」は身近にいない存在、もしかしたら地球上にいない。ということなのかもしれません。それでも暗く感じない主体の想い。静かで優しい愛を感じる、そんな広さをデザインでも意識しました。


7月

全部この暑さのせいだ下敷きで扇いだ風に色がつくのも外村ぽこ

下敷きの風の色、というのが、初見では生ぬるい風のような、あまり心地よさを感じませんでした。ですが、皆様から投票時に頂いた評を読んで、魅力を知ることができました。「下敷き」が出てくることで、学校、教室の映像が見えてくる。暑い日、下敷きで扇ぎあっているのかもしれない。結句「色がつくのも」の部分で、学校生活全体への広がりを感じました。プールに入ったり、教室の窓を開けたり、髪を結んだり。そんな夏の様々な行動が結句から見えてくる。学校生活での「恋のはじまり」爽やかな青春を感じる短歌に合わせて、ここからはじまるような、今からさらに色がついていくような、広がりを意識し「色がつくのも」の文字を白にしました。

※応募時は「仰いだ」表記でしたが、作者様のご希望を踏まえ「扇いだ」に変更しております。


8月

カンヴァスからそっと離せばその街の海一滴にうるむ筆先石村まい

キャンバス→街の海→筆先と映像が切り替わります。最初はキャンバスが置かれている部屋。主体が絵を描いている空間から、絵の中の街、海が見えてきます。そして絵の海を受けて、筆先がうるむ。現実と空想の世界を行き来するような、美しいゆがみがあります。きれいな海の絵。というだけではない空間を、デザインでも意識しました。


9月

ひまわりの種を抜き取る九月から夏の余韻をあつめるように睦月 雪花

明るい夏の終わりが素敵です。いきいきとしたひまわりではない、もう終わりかけの萎れてきているものは、寂しく感じると思います。けれど、この主体は「夏の余韻をあつめるように」という夏から秋へ変わっていくことを、とても楽しんでいます。そんな明るさを大切にしながらデザインしました。


10月

秋の色ばかりがならぶ全集の背表紙なでて図書館しずか小泉キオ

一読して、静かで美しい短歌です。繰り返し読むと、ぜんしゅう、せびょうし、としょかん、しずか。と「S」の音が何度も繰り返されている心地よさに気づきます。

全集を探しているのではなく、「なでて」というのも印象的です。特に全集の中身に興味があるわけではなさそうな主体。「図書館」という空間を目的なくゆっくりと見て回っているのかもしれません。読書の秋。図書館に行きたくなる一首です。

デザインに関しては全集の色、秋の色。様々なグラデーションを制作し、ギリギリまで迷いました。カラフルにしていけばいくほど、静かで美しい短歌の邪魔になると気づき、全体をブラウンのみでシンプルに。文字の色を結句へ向けてだんだん明るくしていくことで、図書館内を歩く主体の心地よさを表現しました。


11月

ドアノブに触れればパチリと音がして冬への扉が目を覚ましてく歌眠

静電気をこんなに素敵に捉えることができるんですね。扉をひらく動作とともに「冬への扉」をひらく。外気の冷たさを感じながらも、ワクワクするような短歌。冷たさと光りをイメージしながら、主体の愛らしさも感じるようにグラデーションを調整しました。


12月

母の手に触れた気がした味噌玉の具材溶け出す冬暁に梅鶏

「冬暁(ふゆあかつき)=冬の夜明け」まだ夜の寒さが残る冬の明け方。

「味噌玉」をよく知らなかったのですが、手作りインスタント味噌汁のようなもので、冷凍しておけばお湯をかけるだけで食べられる。というものらしいです。便利ですね!

寒い冬の夜明けに、お湯をかけて食べる味噌汁。母に教えてもらった味噌玉を主体が作ったのか、母が作っておいてくれたものを食べているのか。どちらにしても、目の前にいない母を感じるあたたかさです。夜明けのイメージだけでなく、背景のグラデーションに合わせて、白文字に薄く色を入れることで、母のぬくもりを感じた主体の感情が伝わるようにと考えました。


表紙

ゆびさきで点字は意味に、てのひらで触れれば意味は星空になる藤井

短歌を読んだ瞬間に、色や表現したい雰囲気が見えてきて迷わずデザインしました。

夜空は濃い紫で表現し、暗さの中に明るさを感じるように。短歌自体の魅力である「点字」が「意味」から「星空」になるという変化を、濃い紫から白へ向かうグラデーションで表現し、三段目の点字と背景色を馴染ませるように工夫しました。

(敬称略)


全体としては、点字が入ることを想定したデザインにしたかったため、どの位置まで点字がくるか、点字の表記に間違いはないか、点字と文字全体のバランスはどうか。など、こだわりながら制作できたのも、ご協力いただいたココロスキップの皆様のおかげです。ありがとうございます!

そして「LUXEうたカレ2024」にご参加・投票してくださった皆様のおかげで、こうして完成し、販売ができています。本当にありがとうございます!

「LUXEうたの卓上カレンダー2024」はLUXEオンラインショップにて2023年11月15日より¥800(送料無料)で販売中!

ぜひお手元でご覧ください☆

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